大学二年生のときに付き合っていた同い年の彼女が居た。

20代 男性

大学二年生のときに付き合っていた同い年の彼女が居た。
クリスマスイヴに待ち合わせをして、ディナーにいく予定だった。
午前中はお互い予定があり、昼過ぎに集合することになった。
待ち合わせ場所は渋谷ハチ公前という定番中の定番。
自分は下北沢で髪を切り、ぱっちりきめて渋谷へ向かう。
しかしその日人身事故の影響で電車は止まっている。
時間も早いし歩くことにした。線路沿いをひたすら歩く。

渋谷の一歩手前でラブホテル街を通った。賑わっていた。
さすがクリスマスイヴともなると人が多い。
ついキョロキョロあたりを見渡してしまう。
若い男女が情事を終え、すっきりした顔で次々に出てくる。
またぎこちない足どりでラブホテルに入る男女も居る。

この日がラブホテルデビューなのかとくだらないことを考えて居た自分に笑いをこらえ、ひたすら歩く。
そして目を疑うこととなる。
彼女がラブホテルにむかっている。
それも凄く年上のダサい男。
虫唾が走るという言葉はこのような時に使うのか。
気づかれないうちに走ってその場を去りたかった。
なぜならこんな場面を目撃して今後うまくやっていける気がしなかった。
今までの思い出が走馬灯のように頭をよぎる。
楽しい思い出もそのときばかりは薄紫に見え、寂しさが漂う。
しかし時すでに遅し。彼女が自分に気がついた。
その場にうずくまりうなだれる彼女。
横でただただ震えるダサい男。許せなかった。

次の瞬間更に驚くべき事態が目の前で繰り広げられる。
男はおもむろにカバンに手をかける。
カバンからは封筒が出てきた。100万円あるという。
続けて男はこう言う。『これで許して欲しい』と。
ふざけるなと思うと同時に幾つかの疑問が頭をよぎる。
まず、なぜこんなダサい男と彼女が関係をもっているのかということ。
そして彼女と自分の関係を知らない彼がなぜお大金を差し出すのかということである。

そんなことを考えていると、一人の女性が現れた。
彼女を女手一つで育てた母親である。
もう何が何だかわからなかった。
そして彼女の母親はこう切り出す。
『こんなところで話すのもなんなんで、中に入りませんか？』と。
断った。なぜなら自分には後ろめたい気持ちがあったからだ。
あれは一年前のクリスマスイヴ。
彼女の家で母親も交え三人でホームパーティをする予定だった。
しかしいっこうに現れない彼女。
『先に始めてて』とメールがあったのは夜８時。
なぜか彼女の母親は未成年の自分にワインを勧めたが、自分は飲まなかった。
時間が進み彼女の母親はすっかり酔い始めた。
そして『部活で遅くなり帰れない』という連絡が日付が変わる頃に入る。
当然自分も帰れないので、とめてもらうことに。
凄くドキドキした。なぜならば彼女の母親はまだ３８歳。
細く長い脚がセクシーな女性だった。
そして彼女と瓜二つで、よく姉妹と間違われる程の美貌を保って居た。
それぞれが風呂に入り、それぞれの部屋で朝を迎えるのだとおもっていた。
しかし、現実は違っていた。
先に彼女のベットに入っていた自分はウトウトしていた。
遅れること30分。
母親がベットに入ってくる。
シルクのガウンが心地よく自分の背中をくすぐる。
そしてこう切り出す。『抱いて』と。
その夜は寝かしてもらえなかったことは言うまでもない。
そう。先に浮気をして居たのは自分の方だった。
よりによって彼女の母親と。
そしてちょうど一年後彼女の浮気現場を目撃という事態。
そして更に驚かされる。
その男は彼女の父親だった。
しばしパニック状態となり、母親に導かれ四人で部屋へ入る。
そう定員四名のラブホテルである。
彼女の父親は小さい頃から彼女に性的暴行を加えて居たらしく、それが原因で彼女の母親と離婚した。
長い年月が経ち、彼女は成人式の写真を父親に送った。
成長した自分を見て欲しいということで送ったのだ。
その日以来父親は彼女を探し回り、クリスマスイヴの日に街で偶然彼女を見つけたのだ。
そして父親だということを隠し、援助交際を彼女に持ちかけ、彼女はそれに応じたのだ。
彼女はお金に困って居た。
母親の稼ぎだけではやっていけず、アルバイトをかけもちして居た。
父親はそれを知り援助交際をもちかけ、ただホテルに入り、何もせずにお金を渡すつもりだったという。
そして母親とラブホテルで合流し、父親だということを打ち明けようとして居たらしい。
物心ついた時には父親の姿は彼女の前にはなかったので、彼女は父親の顔を知らなかったのだ。
そして封筒に入った100万円は父親が彼女のために貯めて居たお金なのだ。
つまり浮気をして居たのは自分だけで、彼女はなんにも悪くなかったのだ。
その後正直に一年前の彼女の母親との出来事を話し、彼女と自分は別れた。
それ以来自分は浮気は絶対にしないと心に誓ったのだ。
そして先日結婚した。
年上の奥さんと一緒になった。あの日浮気した彼女の母親とどことなく似ているスレンダー美女である。
あの日のことは絶対に忘れてはならないといつも心の中で叫んで居る。