実際に付き合う寸前のところは互いに認識していた。

20代 男性

お付き合いする前のタイミングだが、お互い好きだという気持ちは声に出して言える仲、実際に付き合う寸前のところは互いに認識していた。
メールで「毎日好きだ」とか「愛してる」とか、を他愛もなくやり取りしあえていた。
ただ元彼元カノの関係だっただけに、踏み出せないでいるのも事実としてあった。
彼女の誕生日、仕事で会えず、そういった日に限って連絡が取れない。
せめてものサプライズと思って、2人の好きなケーキ屋さんであらかじめケーキを予約しておいた。
閉店時間ぎりぎりに取りに行きながら、焦る手でケータイの受信メール問い合わせボタンを何度も押すけれど、メールは来ていない。
あ、そう言えば今日は会社の人と飲み会だと言っていたっけか。
ケーキは間に合ったけれど、当の本人会って渡して、祝いたい。
昔付き合っていた頃のように、もう1度上手く行くように・・・なんて思いながら自分の家で連絡が来るまで一度待つことにした。

ケータイのバイブ音。
メールが来た!と思ったら、何時になるか分からなさそう……とのこと。
仕方ない、彼女の家にケーキだけ置いておいて、メモ程度添えておこうと思って車で、丁度彼女の誕生日の1日が、日が変わる頃の時間に車で出かけた。

ちょっと置くだけだから、といつものところに路駐して、3Fまで階段で上がり、やっぱり居ないかな、戻ってきて無いかな・・・とインターホンを押すも、やはり居ないようで。
ドアノブに予定通りケーキの入った袋を提げておき、車に戻った。
エンジンをかけて、いつもの帰り道で帰ろうとしたその時、夜中人通りの少ない歩道に見慣れた人影を見かけた。
えっ……まさかと思って見ると、男と手を繋ぎ笑って話しながら、帰ってきている彼女の姿。

今まで感じたことの無いような感覚に襲われ、思わず車の窓を開けて、彼女の名を叫んだ。ほんの一瞬に。
びっくりしたように振り向いた彼女を見て、僕は車を降りてもう1度彼女の名を呼んだ。
彼女は、泣き、喚き、走って家とは別の方角に走って行ってしまった。
追いかけたが、何故か足がとても速く、見えなくなってしまった。
車もあったので、戻ると男性が残っていた。
悪気があったのか無かったのか、僕は付き合ってないですよ、彼でも無いです、その場の流れで……というものだから、より腹が立ったけども、この時の僕は全てに絶望し、帰る事にした。
家に着くと、1件のメールが。
私は最低だ、私なんかと連絡取らない方がいいよね、というような内容。
そんなに簡単に出来ないよ、君はどうしたいの、と一言返事。
もう1度一緒に居たい、と彼女。
したら今から来て、話してくれ、と返事を。
彼女は家に来て、話して、結果、お付き合いする事になった。けれど……1週間しかもたなかった。
やっぱ違った。らしい。つまり僕から切り出したのではないということ。
そういう人はそういう人で、こころもからだも安定しないのだろう。
あの夜中に泣いている女性を走って追いかけた記憶は忘れられません。

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